現場の声を聞いてみよう
「抱えない介護」を実施している施設はまだ少ない
日本の介護現場でノーリフティングケアを導入している施設は全体の3割にも達していないのが現状です。使用されている福祉用具として圧倒的に多いのが、安価かつ手軽に使えるスライディングボードやスライディングシートです。次いで多いのが高価でセッティングに時間がかかる移乗リフトですが、全体の割合からするとまだまだ少ない状況です。移乗用の介護ロボットを使用している施設は、ノーリフティングケアを導入している施設の中でもごくわずかです。では、なぜ介護現場の多くがまだノーリフティングケアを導入していないのでしょうか。現場の声を聞いてみましょう。
ノーリフティングケアを取り入れている人
ある介護者はノーリフティングケアを実際に取り入れてみたことで「ノーリフティングケアは手間がかかる」という当初のイメージとは異なることに気づきました。福祉用具のセッティングに時間がかかると思っている人の多くは、ノーリフティングケアの経験がない人であったとも感じています。また、介護業務にかかる身体的負担が大幅に減ることで気持ちにも余裕が生まれ、ノーリフティングケアが可能なら年齢を重ねても介護の仕事が続けられるとの確信が深まりました。
別の介護者は移乗リフトを使用することで利用者が感じる恐怖感が和らいでいることに気づきました。ただし、福祉用具は使い方を誤ると危険なので、油断は禁物であるとも感じています。利用者の中には介護ロボットの使用を希望する人もいるようです。トイレで抱えない介護ができるロボットが今後開発されることを希望する声もあります。
ノーリフティングケアを取り入れていない人
ノーリフティングケアを取り入れていない人の多くが、ノーリフティングケアに対して好意的な見方をしています。それでも取り入れていないのは、導入が難しい事情があるからです。
ある介護者はノーリフティングケアに好意的で、介護現場には必須の手法だと感じています。しかし、コスト面や介護職員の福祉用具に対する理解不足があり、すぐに導入することは難しいようです。在宅介護でもノーリフティングケアができるようになれば、施設での導入がさらにスムーズになるとの声もあります。
別の介護者はノーリフティングケアが理想としながらも、現状の業務をこなしていくことに精一杯で機器の導入にまで手が及ばない現実があると訴えています。また、福祉用具はあっても活用できていないというケースもあります。
在宅介護におけるノーリフティングケアの難しさ
ノーリフティングケアを在宅介護でも取り入れることができれば、介護者と利用者の双方の負担が大幅に軽減されます。しかし、訪問介護の場合は現場によって条件が異なっており、コストやスペースの問題などもあって難しいのが現実のようです。