ノーリフティングケアの基礎知識
ノーリフティングケアの考え方
腰痛に悩む介護者の問題は世界共通で、ヨーロッパでは腰痛による人手不足を解消すべくノーリフティングケアに関する方針を打ち出しています。ノーリフティングケアの考え方は、補助機器を用いて抱えない介護を実践しながら介護者にかかる身体的負担を減らしつつ、介助される人の動きや自立を妨げない介助を行うというものです。1995年にはイギリスの看護協会が、1998年にはオーストラリアの看護連盟ビクトリア州支部がノーリフティングポリシーを発表しています。その後、ノーリフティングケアのプログラムを導入したビクトリア州や南オーストラリア州において、移乗による労災申請数が減少することが実証されました。日本では2009年に日本ノーリフト協会が設立されています。
ノーリフティングケアの導入に必要な基礎知識
ノーリフティングケアを導入するにあたって必要となるのが補助機器です。ノーリフティングケアに関する知識の共有やアセスメントも重要な要素です。日本ノーリフト協会では、「ノーリフトケアコーディネーター」を養成・認定しています。ノーリフトケアコーディネーターとは、腰痛予防対策に関する知識に基づいて活動している人のことです。ノーリフトケアコーディネーターの養成プログラムは、オーストラリアで開発されたプログラムをもとに作られています。
現状を把握し腰痛発生リスクを分析する
ノーリフティングケアを効果的なものとするために欠かせないのが、現状把握と腰痛発生リスクの発見です。腰痛が発生しやすい業務のシーンを切り取って分析し、どのように改善すれば腰痛を防げるのかをよく考えます。そのような工程を繰り返しながら、行うべき対策に優先順位をつけていきます。
厚生労働省が公開している「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」には、「前屈みや腰のひねりなどの介助姿勢はないか」「利用者/患者を持ち上げるなどの重量負荷はないか」「腰に負担がかかる動作が頻繁にないか、またその持続時間は長くないか」「作業環境の場所が狭かったり、滑りやすかったりなどの問題はないか」の4つの視点から腰痛リスクを明確化し、対策を検討するよう推奨しています。
重要なのはポリシーの普及
日本の介護現場は補助機器の使用に罪悪感を抱く傾向があり、たとえ非効率的だとしても人の手による業務を強行しようとしがちです。ノーリフティングケアの導入で最も重要なのは、ノーリフティングケアの目的を明確化し正しい認識を共有することです。ノーリフティングケアが介護者と利用者の双方の負担を軽減することにつながるとの認識が深まれば、介護者の労働環境はより良いものになっていくでしょう。ノーリフティングケアに関する詳しい情報は、日本ノーリフト協会の「ノーリフティングケアとは」から入手できます。
日本における介護現場の腰痛の現状やノーリフティングケア導入によって得られるメリットなどについて掲載されています。